研究概要 |
最終年度は、色素モデル分子を1-ナフトール、2-ナフトール、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸の4種に絞り込み、光増感電荷移動特性の評価を行った。光吸収スペクトルの測定、2-プロパノール懸濁液への可視光(400-500nm)照射効果のin-situ ESR測定を以下の通り実施した。 1.光吸収スペクトル法により、1-ナフトールおよび1-ナフトエ酸のTiO_2(アナタース、AMT-100)への吸着量がTiO_21g当たり5x10^<-5> molおよび2x10^<-4> mo1であると評価した。4種のモデル分子は、いずれもTiO_2に吸着することで、電荷移動錯体を形成し、1-ナフトールの場合、電荷移動吸収帯が可視部に最も強く現れた。この電荷移動吸収帯の強度は、可視光照射で生成する内部Ti^<3+>量と良い相関があり、1-ナフトールで最も強いTi^<3+>信号を観測できた。 2.1-ナフトール/TiO_2への可視光照射で生成する3本線スペクトル(分離幅約1mT,g=2.006)は、非経験的分子軌道計算法を用い、ナフトキシルラジカルに帰属した。このことから、ナフトールは、TiO_2表面で脱プロトンし、ナフトキシドアニオンとして吸着していることが示唆された。 3.可視光照射のON-OFFに伴うTi^<3+>およびナフトキシルラジカルのESR強度の時間変化を測定した。速度論的解析の結果、光照射に伴う電子移動で表面Ti^<3+>が生成し、この表面Ti^<3+>がTiO_2-ナフトキシルラジカル間での電子移動に関与していると仮定すると、実測値を満足に再現できることがわかった。光強度を50%および20%にしたときの光応答も同じ反応スキームを用い、光化学反応の速度定数を1/2倍および1/5倍に減少させると再現することができた。
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