層状化合物である酸化黒鉛をアルキルトリクロロシランによってシリル化する際の層剥離剤であるブチルアミン添加量、シリル化剤添加量及びそれらの添加割合を種々変化させることによって最もシリル化度が高くなる条件を見いだした。この時の酸化黒鉛あたりのシリル化剤導入量は酸化黒鉛あたり約0.6molで、これは滴定により求めた酸化黒鉛中の酸性を示す水酸基の量とほぼ同じであった。また、シリル化剤中のアルキル鎖長が長くなると、層間での架橋反応が進行しシリル化剤含有量がさらに増加することがわかった。これらのうちアルキル基が最も長くシリル化剤含有量も大きな炭素数18のアルキルトリクロロシランでシリル化した酸化黒鉛と1-ピレンカルボキシアルデヒドと3-アミノプロピルトリエトキシシランとの反応によって得られる色素との反応をトルエン中還流条件下で行ったところ、ピレン基を持つ色素がシリル化酸化黒鉛層間にSi-O結合を介して固定化された。発光スペクトル測定から、反応させる色素量を変化させると層間に導入されたピレン基の凝集は抑制されることがわかった。これはアルキル鎖のスペーサー効果のため色素同士の凝集が抑制されたためであると考えられた。この手順を用いると酸化黒鉛よりも透明性の高いシリカ系材料であるマガディアイトへも同様に色素をSi-O結合を介して固定化することが可能であり、得られた材料は酸化黒鉛の場合よりもさらに強い発光を示すことが明らかとなった。
|