種々の鎖長のアルキルトリクロロシランを種々の割合で酸化黒鉛と反応させることで得られたシリル化酸化黒鉛と1-ピレンカルボキシアルデヒドと3-アミノプロピルトリエトキシシランとの反応によって得られる色素との反応をトルエン中還流条件下で行い、ピレンを層間に固定化した。固定化されたピレン量は酸による加水分解後、吸光度を測定することで定量でき、酸化黒鉛ユニットあたり最大で0.7個ピレンが固定化されていることが分かった。得られた試料の層間距離からピレンの凝集は、酸化黒鉛層間のアルキル鎖が単分子膜構造を示す時には起こらず、二分子膜構造に変化した際にのみ起こること、単分子状態で固定化できるピレン量は酸化黒鉛ユニットあたり最大で0.45個に達することが分かった。またこのことからピレンの凝集は、同一のシリル化酸化黒鉛層面内で起こるのではなく上層に結合したピレンと下層に結合したピレンの重なりによるものであることが示唆された。さらに、ペルフルオロアルキル基を導入したシリル化酸化黒鉛をホストとすることで、低振動数のC-F結合の存在によりピレンの無放射失活が抑制され発光強度を上昇させることができた。これに加えて、あらかじめアミノ基をシリル化酸化黒鉛中に固定化すればピレン部を有する活性エステルと反応させることでもピレンを固定化することができ、この場合、ピレンの発光ピーク波長付近に吸収を示すC=N結合を含まないため、さらに発光強度を増加させることも可能であった。
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