研究概要 |
水素終端化シリコン表面上へ自己組織化可能なジチオカーバマート錯体を固定するために, a)ジチオカーバマート配位子の末端にアルケンを導入し,この錯体と水素終端化シリコンとの反応によりジチオカーバマート錯体を固定する, b)水素終端化シリコンとω-アミノアルケンとの反応によりアミノアルキル終端化シリコンとした後,アミノ基を利用した表面反応により錯体を固定する,検討を行った。 まず,アリルアミンからジチオカーバマート錯体を合成し,水素終端化シリコンとの反応を行い,錯体終端化の可能な条件およびその確認のための分析方法を検討した。その結果,電子スペクトルによって錯体特有のd-d遷移を確認できること,また,表面の水接触角を測定することで錯体固定を判断できることを見いだした。ただし,この経路では両末端にアルケンをもつ錯体しか合成できていないためシリコン表面での自己組織化については検討できなかった。ついで,b)の経路による固定について,シリコン表面をC3〜C9のアミノアルケンを用いて終端化を施した。このようにして得たアミノアルキル終端化シリコンをメタノール中に浸漬し,ニッケル塩,グリシンメチルおよび二硫化炭素を1:1:2のモル比で加え,通常錯体を合成する場合と同様な条件下で反応を行った。a)で明らかになった確認方法を用いて分析を行った結果,炭素数が少ないアミノアルキル終端化シリコンの場合に効率よく反応が進行することを明らかにした。 また,自己組織化可能なジチオカーバマート錯体による分子認識能を明らかにする目的で,プロトンドナーあるいはアクセプターとして作用しうる化合物とのクラスレート形成を検討した結果,グリシン誘導体がジオキサンあるいはp-フェニレンジアミンとクラスレート形成することを見いだした。
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