研究概要 |
リサイクルポリプロピレンとしては、一般的に良く使われているイソタクチックな立体規則性を持つポリプロピレン(iPP)を用い、重合用のモノマーにスチレン、ラジカル開始剤として2,2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を使って、オートクレーブ中で超臨界二酸化炭素溶媒、80℃でラジカル重合を開始させてスチレンのグラフト重合を行なった。その結果、iPP鎖ではラジカル重合中に劣化(鎖の切断)が激しく進行してしまうということが明らかとなった。そこで、超臨界中でのラジカルによる劣化反応に耐えることのできるPPを探索するために、溶出溶解分別法(TREF)を用いてイソタクチック度(mmmmm:メソペンタッド分率)が52,76,87,91%の4種類のiPPを分別により作製し、熱重量測定装置(TGA)を使って各々のiPPの劣化開始反応の見かけの活性化エネルギー(ΔE)を求めて比較検討を行なった。その結果、ΔE(KJ/mol)=-1.24×[mmmm]+205〜235という、劣化安定性がイソタクチック度に対して負の直線関係にあることが明らかとなった。負の直線関係を示す原因として、イソタクチック度が高いiPPほど高分子鎖がコンパクトな3_1ラセン構造を採るために、劣化反応が分子鎖内で連鎖的に進むためと結論付けた。したがって、3_1ラセン構造の量を適度にコントロールすれば、劣化し難いiPPとなり、超臨界二酸化炭素溶媒を用いたグラフト重合による高機能化ができる可能性が示唆されたと考えている。 次年度はエチレンが共重合された種類(グレード)であるランダムPPに関してもエチレン含有量と劣化安定性の関係を明確にし、グラフト重合化によって高機能化可能なPPグレードの適用範囲を明確にし、高機能化を試みる予定である。
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