昨年度までの研究結果から、ラジカル反応を利用したグラフト重合時にポリプロピレンマトリックスの劣化が激しく進行する事が分かった。従って、超臨界状態のCO_2を使ったラジカル開始剤によるグラフト重合化の目的遂行のためには、急激な劣化に対して耐性のあるポリプロピレンが望ましい。この点を踏まえて、劣化とポリプロピレンの一次構造の関係を明らかにすることでグラフト重合に適したポリプロピレンの探索を行ってきた。特に本年度は、ポリプロピレンはインパクトポリプロピレンと呼ばれる多成分系ポリプロピレンの劣化挙動を溶出溶融分別法を用いて詳細に調べ、エチレン・プロピレンコモノマー連鎖や共重合化に伴う立体規則性の乱れと劣化の関係を明らかにする検討を行った。その結果、エチレン単位が連鎖中に存在すると劣化耐性が上がること、立体規則性の乱れもまた耐性を上げることが分かった。 この他の検討として、ポリプロピレンに存在する不飽和末端が劣化時に与える影響も調べ、不飽和末端が劣化を促進する働きがあることも見出した。 以上の結果から、超臨界二酸化炭素溶媒を用いたグラフト重合による高機能化が期待できるポリプロピレンのグレード(種類)としては、エチレンを若干共重合させたランダムポリプロピレンとよばれるグレードが適することが分かった。また、不飽和末端の含有量が多く存在するポリプロピレンでは高機能化が難しいことも事前に判断できることが分かった。
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