研究概要 |
昨年度までの研究結果から、超臨界二酸化炭素溶媒を用いたグラフト重合による高機能化が期待できるポリプロピレン(PP)のグレード(種類)としては、劣化に弱いイソタクチック連鎖を所々分断でき、さらには不飽和結合生成に導くラジカル切断が起こり難いエチレン連鎖をPPポリマー鎖内に持つランダムPP(rPP)とよばれるグレードが適することが分かったので、スチレングラフト重合化による高機能化を試みた。重合はステンレス製オートクレーブにスチレン/ヘキサン溶液、rPP試料ならびに2,2-アゾビスイソブチロニトリルおよびt-Butyl peroxideを所定量窒素雰囲気下で入れ、液体窒素ならびに真空ポンプを使い凍結・脱気後、室温で導入可能な所定の圧力でCO_2を導入して50℃まで温度を上げ超臨界状態にして所定の時間保ち、その後80および100℃に温度を上げて所定の時間保ちラジカル重合を開始させてグラフト重合化を行なった。rPPは通常のPPに比べて劣化耐性が若干向上しており、サンプルの形状を維持したままグラフト化できたものを得ることができた。得られた試料をラマンスペクトルで断面部を観察した。グラフトしたポリスチレン(PS)の濃度分布を顕微ラマン測定によりマッピングを行なった。PSの濃度は、rPPに由来する1460cm^<-1>付近のピークとPSに由来する1603cm^<-1>付近のピークの強度比(Isty=A_<1603>/A_<1460>)で比較したに従って規格化して比較した。その結果、表面近傍にグラフト重合化が集中しており補強としていることが分かった。この結果は、目標とする劣化PPの補強という点から好ましいものであったが、同時にグラフト重合時に表面にクラックが入り脆くなってしまうという好ましくない挙動も生じ、さらなる検討が必要であることが分かった。
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