パルス着磁による超強力な超伝導バルク磁石の実現と、その着磁メカニズムの解明及び、バルク磁石の産業応用を目指した検討を平成17年度に引き続き行った。 これまでの研究から、バルク温度T_sの低温化と、複数回の同一強度のパルス磁揚印加によるΔTの低減が、B_Tを向上させる重要な点であることが明らかになっている。平成17年度に、T_sとB_<ex>を最適化した2段階着磁法(MMPSC法)を新しく考案し、この方法を用いて直径45mmのRE=Gd系バルク表面でB_T=5.20Tの世界最高記録を達成したが、平成18年度はこの方法が他の超伝導バルク材に対しても有効であることを確認した。具体的には、従来のパルス着磁法でB_T=3.3Tであった直径45mmのRE=Sm系バルクが、MMPSC法を用いることでB_T=4.3Tまで捕捉磁場が向上した。さらに、33mm角のRE=Gd系バルクに対しても有効であることを確認した。 また、直径65mmの大型超伝導バルクに対して、パルス着磁特性を評価し、直径が大きいため既存のパルス電源では中心まで磁束が侵入しないことが分かった。しかし、MMPSC法により捕捉磁束の増大を確認した。 捕捉磁場向上の研究の他に、応用を目指して複数の超伝導バルクを平面上に配列して、パルス着磁法で着磁を行う新しいタイプの超伝導バルク磁石の開発も行った。2連型および5連型超伝導バルク磁石装置を作製し、磁気力を用いて薬を患部に素早く輸送するドラッグデリバリーシステムや、環境浄化用磁気分離への応用を行い、一定の成果を上げた。本研究により、パルス着磁による超伝導バルク磁石が実用化に一歩近づいたと言える。
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