研究課題/領域番号 |
17560004
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
矢口 裕之 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 助教授 (50239737)
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研究分担者 |
吉田 貞史 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 教授 (70302510)
土方 泰斗 埼玉大学, 大学院理工学研究科, 助教授 (70322021)
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キーワード | エピタキシャル / 結晶工学 / 光源技術 / 先端機能デバイス / 光物性 / 単一光子 / 等電子トラップ |
研究概要 |
単一光子発生素子は、量子暗号等、量子情報技術の分野で重要な役割を果たすデバイスと考えられている、そこで、本研究では、単一光子発生素子への応用を目指して、窒素原子や窒素原子対によって形成される等電子トラップが、励起子を束縛する効果に着目して、窒素原子対を基本的な単位構造とする半導体量子ナノ構造を作製し、特異な光物性を発現させ、その物理的な解明を行なうことを日的とした。具体的には、原子層ドーピング技術を用いて窒素原子を局所的にドーピングすると同時に、電子線リングラフィーを用いた微細加工技術によって、特定の配列をした単一の窒素原子対からの発光を観測できるような構造を作製した。母体となる半導体材料にはガリウム砒素およびガリウム燐を用いて、これに極低濃度の窒素原子をドーピングした。特定の配列をした窒素原子対を得るために、窒素原子のドーピング濃度、成長温度や原料の供給比などの最適化を行った。このような構造についての検討の結果、直径1μmの範囲内に特定の配列をした窒素原子対が一つだけ存在するような構造を作製することに成功するとともに、顕微フォトルミネッセンス測定によって線幅が50μeV以下の鋭い発光を得ることに成功した。この結果は、等電子トラップを用いた単一光子発生素子を実現する可能性が十分に高いことを示すものである。また、互いに偏光方向が直交し、わずかにエネルギーの異なる2つの発光線も観測されたことから新規デバイスへの応用も期待される。さらに、素子への応用の上で不可欠となる発光効率を向上させる方法に関して検討を行い、ガリウム砒素・窒素系の混晶半導体において、極低温下でレーザー光を照射することによって発光効率を向上させる独自の方法を確立するとともに、この現象が局所的な構造変化と関連していることを顕微ラマン散乱分光によるその場観察によって明らかにした。
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