本研究の目的は表面プラズモンを用いて3次の非線形光学による全光型スイッチングデバイス実現のための基盤技術を確立することである。そのため、(1)全反射減衰法を使った表面プラズモンの励起方法の検討、(2)良質な非線形光学材料薄膜の作製方法の最適化、(3)非線形光学効果を利用した非線形光学薄膜の評価方法の確立、(4)スイッチング素子の作製およびその評価(5)スイッチング応答の計算機シミュレーションを行った。非線形光学材料には直径100-120nmの大きさのポリジアセチレンナノ微粒子を用いた。ポリビニールアルコールをマトリクスとしてナノ微粒子を分散し、スピンコート法により製膜を行うことにより膜厚の制御性が良く、ほぼ均一な薄膜を得ることができた。また、光第3高調波のコヒーレンスをメーカーフリンジの解析により評価する方法を開発した。これらの検討から、表面プラズモン用いた全光スイッチングデバイスを作製して評価を行った。弱いスイッチング特性は、当初シミュレーションで予想した特性を得るには至らなかった。薄膜中を伝搬する光のコヒーレンスが30%程度となってしまうため、表面プラズモンの励起が弱いためであると考えられる。しかしながら、直径40nm程度のナノ微粒子の作製が作製できれば、十分な性能を持つ素子が作製できることがわかった。これらの結果は、ポリジアセチレンのようなπ電子共役系が高速光情報デバイス材料として有用であることを示唆するものである。
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