本研究では、Si一ULSIにおけるCu多層配線部分での極薄バリヤの導入において、その信頼性の鍵となる界面層のない理想的な界面形成について検討を行った。 まず、できるだけ低温で安定な窒化物バリヤを成膜するために、スパッタ法とWワイヤによるラジカル窒化を組み合わせた新たな手法を提案し、その有用性と問題点について検討した。この新規成膜手法で作製したTiNバリヤは、基板加熱しなくとも安定でかつほぼ1:1のTiN化合物が得られ、3nmまで極薄化しても500℃の熱処理に耐え得る優れたバリヤ特性を示すことが明らかとなった。その要因は、バリヤ自身が安定な化合物として、かつ低温で作製できたこと、さらにはその構造が熱処理によって顕著に変化しないことと等の様々な要因が相まって、通常の界面に生起する界面層が存在しない界面を実現できたことによるものと推察された。一方、我々は極薄バリヤとして新たな材料の適用を検討し、ZrB_2という化合物でありながら極めて低抵抗な材料を従来報告されている温度よりも低温で作製することにより、Cu配線プロセスへの導入を検討した。その結果、ZrB2膜は室温から500℃までの堆積温度で成膜でき、かつ得られた膜は700℃で1時間の熱処理後においても、顕著な構造変化も見られず、優れた安定性を持った材料であることが明らかとなった。さらに、Cu/Si02間に拡散バリヤとして適用した結果、700℃の熱処理後においても、新たな反応生成物等も見られず、優れた熱的安定性を示すことがわかった。したがって、本研究により、極薄バリヤを用いた際に従来から問題となっていた界面層を効果的に抑制することが可能となり、その結果、3nm程度の極めて薄いバリヤを適用した高信頼Cu配線を実現できる見通しが得られたものと思われる。
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