光反応性高分子材料として、種々のポジ型およびネジ型レジスト材料を取り上げ、ガラス基板上に塗布し、ラビング処理を行い、ネマチック液晶分子の配向特性を調べた。一様な液晶分子配向状態が得られた材料に関し、さらに紫外線照射を行い、高分子配向膜の光改質前後の液晶分子の配向特性を比較した。その結果、2種類のネガ型レジスト材料に置いて、下記に示す特異な配向結果が得られた。 1.ポリビニルシンナメート(PVCi)膜における光架橋と方位角アンカリング力変化 ラビング処理を行ったPVCi膜に対して、液晶分子はその面内においてラビング方向と垂直に配向するが、その方位角アンカリング力は非常に弱く、一般のデジタル表示等に用いられるツイステッドネマチック(TN)配列が作製できない。しかし、320nm以下の紫外線を照射すると、PVCi側鎖の架橋反応によりアンカリング力が増加し、TN配列の保持が可能となった。さらに、架橋度とアンカリング力の関係を明らかにすることで、TN配列のねじれ角制御が可能であることを、理論的実験的に示した。すなわち、配向膜への紫外線照射量により液晶分子配列の面内における配向分割処理が可能であり、その分割空間分解能は液晶層厚と同様な数ミクロン程度を達成することができた。 2.カルコン側鎖を有する架橋性高分子薄膜による配向容易軸分割処理 未架橋の状態のカルコン系高分子膜をガラス基板上に作製し、部分的に紫外線を照射することで表面改質を行う。その後ラビング処理を行う。この配向処理工程では、未架橋表面では液晶分子の配向容易軸はラビング方向と垂直に、架橋反応表面では平行であることを見出した。一方、ラビング処理を施した後に紫外線照射による表面改質を行っても、液晶の配向容易軸は変化しない。各配向処理を行った配向膜の偏光紫外光の吸収スペクトル異方性の測定結果から、高分子主鎖と側鎖の配列状態が配向処理手順によって異なることを明かにした。
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