1.ラビング処理を行ったPVCi膜に対して、側鎖の架橋反応によりアンカリング力が増加し、ねじれ角を0〜90度まで増加させることを可能とした。さらに、液晶セル作製後のUV照射によってもねじれ角を可変できる、すなわち光書き込みが可能であることを示した。加えて書き込みに必要なUV照射量の3〜10倍程度のUV照射により、書き込み情報を消去すること(ねじれ角0°のホモジニアス配向)も見出した。なお、この消去効果は液晶材料依存性があり、使用液晶の吸収スペクトルの違いによっては、消去不可能な場合もあることを示した。 2.カルコン側鎖を有する架橋性高分子薄膜による配向容易軸分割処理膜では、未架橋表面では液晶分子の配向容易軸はラビング方向と垂直に、架橋反応表面では平行であることを見出した。さらに熱的な安定性を明らかにすると共に、液晶素子への両面光書き込みを可能とした。すなわち、熱現像する前の液晶セルに対して、紫外線吸収剤と2色性色素を添加する。片面にマスクを等してUV照射を行うが対向基板にはUV光が届かないような条件としておく。もう一方の基板においても異なるマスクでUV照射を行う。これによって2重露光を防ぎ、偏光板の配置する位置を変えることで、異なる光書き込み像をそれぞれ独立に可視化でき、2つの潜像を有する光学セキュリティ素子としての応用を提案した。 また、同高分子はプラズマ表面改質によっても、ラビング処理による容易軸を変えることが可能であることを明らかにした。プラズマ改質が進むと、最終的には高分子の分解によると思われる垂直配向表面が形成された。従って、改質度により面内から面外方向への容易軸変化も制御可能であることを示した。 3.表面改質領域と非改質領域の近傍、すなわち配向分割境界領域では、液晶分子の連続的なダイレクタ分布が生じた。この境界領域におけるダイレクタ分布を実測およびフランクの自由エネルギーシミュレーションによって解析を行い、実験と計算結果の良い一致を得た。
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