研究概要 |
硫黄吸着実験に先立ちInP(111)A表面の構造と電子状態の研究を行った。InP(111)A表面をスパッター(0.5kV,30分)とアニール(320℃、10分)を行うと表面は(1x1)構造を示した。更にスパッター(0.5kV,30分)とアニール(310℃,5分)を行うと、(3x3)LEEDパターンを示した。(1x1)と(3x3)構造を示した表面のオージェスペクトルを比較するとP/In比はそれぞれ7.0,6,0であった。このことは(3x3)構造においては表面のPが減少していることを示している。(3x3)表面におけるSTM像において局部的に(3x3)構造が見られたがそのドメインは小さい。このことはLEEDパターンのバックグランドが高いことをよく説明できる。 (1x1)表面の構造及び電子状態を調べるためにシンクロトロン放射光を用いてIn4dおよびP 2p内殻電子状態シフトを測定した。In 4dでは-0.36eV,+0.49eV,P 2pでは+0.34eVの状態が観察された。-0.36eVの状態は金属的な状態に、+0.49eVはInが表面で3配位している状態に対応する。P 2pの+0.34eVはP-P結合に対応する。しかしながらこれらの結果からは(3x3)構造のモデルを提案することは出来ない。 次に、安定な表面を形成させるために表面にPを供給し、構造をLEEDで測定した。245oCでPを供給すると(2x2)構造を示した。この表面の構造及び電子状態を調べるためにシンクロトロン放射光を用いてIn4dおよびP 2p内殻電子状態シフトを測定した。In 4dでは+0.31eVの状態が確認されたがP 2pではシフトは観察されなかった。このことは(2x2)構造はIn欠陥モデルであることを証明している。
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