研究概要 |
III-V族化合物半導体表面にはダングリングボンドが存在し、それらの電子状態がバンドギャップ間に存在するといわれている。又、それらのためにフェルミレベルがピニングされデバイスのパフォーマンスを著しく損なうことが知られている。このことを解決するために表面を硫黄で処理することにより表面の不活性化を図ることによりデバイス性能を大幅に改善できるこが発見され[1]注目を浴びた。しかしながら硫黄処理により表面構造や表面電子状態がどのように変化しのかは充分に解明されていなかった。そこで本研究では硫黄処理によりGaAs(111)A[2]やGaP(111)A[3]表面と全く異なる表面構造を形成するInAs(111)A, InP(111)A表面の構造と電子状態を詳細に調べ、特にそれらの表面が金属的になるかどうかについて研究した。 InAs(111)A及びInP(111)A表面ではいずれも硫黄処理すると(2x2)S表面を形成する。電子状態を計算するとInAs(111)-(2x2)Sでは表面は絶縁体であり、実験結果と一致する。しかしながらInP(111)-(2x2)S表面では金属的となる。本研究におけるUPSの実験結果ではInP(111)A-(2x2)S表面は金属性を示した。この結果は表面を非金属で処理することにより表面に金属性を持たせることを可能にする技術を開拓したことになり、将来画期的な技術となりうる。この結果をより詳しく実証するためには今後より詳しいバンド分散の実験が必要と考えられる。
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