熱力学に基づいた界面終端制御とバンドアライメント Alを少量添加したCu単結晶、Alを添加したNi単結晶をそれぞれ基板とした場合に、基板と単結晶アルミナ界面がどのようになり、それが基板のフェルミレベルとアルミナのバレンスバンドとの位置関係にどのように影響を与えるかを検討した。 α-アルミナ(0001)面とCu(111)面、Ni(111)面とは酸素原子を界面終端として界面が形成されることが、複数の実験から知られている。Ab-initio計算によると、Cu-Al、Ni-Alの金属間化合物とアルミナの界面はアルミ原子になることが予想されている。界面原子の種類は、基板中のAlアクティビティーに依存するというこの結果から、我々は、Alを含むCu合金(111)やNiAl(110)を基板として、超高真空中高温にて酸素分圧5x10-8Torrで1024Lの酸素を導入してエピタキシャルアルミナ膜を成長させた。 X線光電子分光(XPS)装置を用いて、Al2pスペクトルを取得したところ、界面原子がAlになっていることが判明した。また、UPSによるO2pスペクトル、フェルミレベル近傍及び価電子帯のスペクトル測定を行い、基板のフェルミレベルとアルミナのバレンスバンドトップとのエネルギー差(バンドオフセット)を計測した。 汎密度関数を用いた第一原理計算によると、界面が酸素原子の場合のバンドオフセットは小さく、界面がアルミ原子の場合は大きいことが知られている。実験結果は計算とよい一致を示した。 結論として、界面ポテンシャルは界面終端原子の種類によって支配されており、金属にAlを添加することにより、界面の原子の種類を酸素からアルミに変えることができ、それによりバンドオフセットの値を大きく変えることに成功した。この方法は界面偏析の熱力学に基づくもので、広く様々な系に応用可能である。
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