研究概要 |
平成18年度では、我々が考案した励起光の空間発散を用いた超広帯域の光パラメトリックチャープパルス増幅方式を更に展開して、複数非線形光学結晶問でのアイドラ光の最適制御による超広帯域の光パラメトリックチャープパルス増幅の安定化に関する研究を進めてきた。結晶間におけるアイドラ光を除かぬ場合には結晶中光伝搬の進行と共に逆変換が生じ、故に利得幅の広がりを促すことは難しいが、結晶を複数枚用い各結晶問においてアイドラ光を最適に制御することによって、更なる広域にわたっての利得保証が可能となる。本研究では、個々結晶における位相整合角度や結晶長、また結晶へのシード光斜入射角度に対して異なる特性を設けた上で、超広帯域にわたる高利得増幅を目指し増幅系設計を行い、光パラメトリックチャープパルス増幅系の最適化を図った。数値解析結果はシード光パルス幅の広がりを示し、一定角度パラメータの同等枚数結晶における解析結果を上回る被増幅シード光周波数帯域の広がりを確認することができた。さらに、日本原子力研究開発機構との共同研究で、我々が考案した励起光の空間発散を用いた超広帯域の光パラメトリックチャープパルス増幅法の有効性を実験で実証した。 一方、増幅したシード光の短波長化に関する研究も進めてきた。タイリング結晶を用いたレーザー核融合用大口径高出力レーザーにおける第二高調波発生の近視野及び遠視野分布に関する数値解析を行い、非線形光学結晶系の大口径化に関する光学設計指標を明らかにした。主な結果としては、基本波波長1053nm、最大強度30GW/cm^2、パルス幅0.5psのレーザーに対して、Type I位相整合方式で厚さ5mmのKDP結晶を採用した場合には、各結晶間の設置誤差および厚さ誤差が存在しない場合のAiryスポットの範囲とそこに集中しているエネルギーを基準にして、その90%を保証するためには、設置誤差および厚さ誤差による位相変化をそれぞれ150μrad、π/2,7以下に抑える必要があり、タイリング結晶の平行度および平面度にはそれぞれ0.09μrad、第二高調波波長の1/30の高い精度が求められる。
|