軸対称回転体の側表面上に微細パターンを形成するリソグラフィ技術として、レーザ走査露光と投影露光の2方法を取り上げて検討した。レーザ走査露光に関しては、レーザビームの位置を固定して微小径の円筒(パイプ)試料をステージ走査して露光する方法を確立した。試料上に直径6.4μmに絞ったレーザビームスポットを当て、スポットの位置をカメラでモニタして位置決めを行った上でパターンを描画した。円柱状の中実試料は軸方向を鉛直にした状態でレジスト中に浸漬してから引き上げると側表面にレジストを均一に塗布できることが判っていたが、中空試料でも同様に外表面に塗布でき、使用した粘度900cpのレジストPMER p-AR900は、少なくとも内径が100μm以下であると、パイプの中には入って行かず、外表面だけに塗布できることが判った。レジスト膜厚は試料をレジストから相対的に引き上げる速度に依存する。高速領域では、ゆっくり引き上げる程、レジストが長時間重力によって降下するので薄くなるが、あまりゆっくりし過ぎると、レジスト液面付近で表面張力により試料外表面に這い上がったレジストが固まってしまい膜厚は厚くなる。また、膜厚は試料の洗浄方法にも依存し、条件を最適化した結果、膜厚1.5μm以下の薄膜まで均一に塗布できるようにできた。レーザ光で走査露光してパターン形成する時に得られるパターン線幅は、走査速度とレジストの膜厚に依存するので、それらに関する関係を調べた。レジスト膜厚を2〜3μmとする時、上記のビーム径のレーザ光により、線幅7〜12μmのパターンを描画できた。従来、最小試料径は160μmであったが、試料径100μm以下まで、前記の線幅でパターンを描画することに成功した。また、上記小径の銅パイプ外表面にらせん状にレジストパターンを形成し、それをマスキング材料として銅パイプをエッチングすると、コイル状のマイクロ部品が得られることを確かめた。投影露光に関しては、写真用マクロレンズを投影レンズとするほぼ等倍の投影露光装置を組み立て、スリットで短冊状に限定したレチクル照射面を円柱または円筒試料外側面上に投影露光できるようにした。投影レンズの開口数を約0.032と低く設定したため、解像度は15μm前後である一方、焦点深度は400μm程度取れると予想できる。円柱または円筒試料の凸面でもこの焦点深度範囲ならば解像すると考えられる。上記と同様の方法で直径2〜10μmの試料にレジストを塗布する時の膜厚を調べた結果、試料が太い程、レジスト膜厚が厚くなることが判った。実際に直径10mmの銅の円筒試料にレジストを膜厚7μmに塗布し、レチクル走査に同期して円筒を回転させて走査露光を行った所、外表面上に線幅20μmの1:1ラインアンドスペースパターンがきれいに解像できた。エンコーダ、空気軸受け溝、潤滑溝など、線幅50〜100μm程度のパターンを形成するのにちょうど適した解像度や焦点深度を有する装置であることが確認できた。
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