研究課題
基盤研究(C)
波動関数の偏光量子干渉を利用した極限超解像光リソグラフィーの基礎確認実験を試みた。偏光2光子吸収の可能性のある材料の探索を文献等で行ったが、現在までのところCuClが可能性のある物質である。CuClの励起状態の寿命は非常に短いので、偏光レーザー照射を行い、観察光を同時照射し回折角の測定を行う方法などが考えられる。まずは基本的な資料作成と観察のための基礎実験を行った。銅版をCuCl溶液中に浸して、CuClの成長を試みたが、適切な成長にはなっていなかったようであり、レーザー光(チタンサファイアレーザー、)を照射して観察を行ったが、所望の結果を得ることはできなかった。さらに他のCuCl成長を試みたが、十分な結果を得ることはできなかった。実用化を考えると、物質には単純な2光子吸収性のみを要求させる方式が望ましい。我々は、入射偏光を時間的に制御することで、超解像パターンができる方式を考案した。典型的な方法として、2光束のP偏光間の位相差およびS偏光間の位相差を制御することで、P偏光によって形成される基本周期干渉パターンとS偏光による基本周期干渉パターンが打ち消しあい基本周期パターン形成を抑制できる。この時さらに、元の入射ビームの偏光状態の時間変動を制御して、2光束のP偏光とS偏光が同時に存在しないようにすると、2倍細かな周期パターンが形成されることになる。これは数学的に表現するならば、偏光の高次コヒーレンスの制御ということになり、偏光の高次干渉を利用したリソグラフィーと呼ぶことができる。この新たな方式の可能性を探るための基礎実験を行なったところ、レーザー波面制御を行なって2光子吸収材料に照射することで、従来知られていなかったパターン形成を確認できた。今後は、偏光の高次コヒーレンスの理論の構築と共に、より実用的な新方式の考案を行い、超解像パターンを実際に形成する。さらに様々なパターンが形成できるような実用的装置コンフィグレーションの開発を行なっていく。
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