1 InGaAs/InAlAs系量子カスケードレーザの雑音特性、スペクトル幅:QCレーザの設計や雑音やスペクトル幅を知ることは応用上、重要であるが未解明な点が多い。そこで先ずRIN測定を行った。FP型QCレーザ(発振波長:5.7μm)を用い、77Kで測定した。40mWの時にRINは-147dBm/Hz@50MHzであり、RIN∝P^<-γ>とした時に測定結果はγ=1.9でフィッティングできた。QCレーザでは自然放出による揺らぎとレーザ上側準位のキャリア揺らぎ等がRINに効き、結果はそれを反映しているものと考えられる。この結果はレート方程式にランジュバン力を入れた半古典的な解析結果と一致する。スペクトル幅の関連では線幅増大係数(αファクタ)の測定と理論検討を進めた。戻り光による出力光の変化からαファクタを求める新規な方法によって<0.5という結果が得られた。QCレーザのαファクタは簡単なモデルでは~0と言われているが、発振波長が利得ピークからずれればこの値は増大するはずであり、発振以外の準位からの影響も考慮に入れて計算を進めた。その他にQCレーザの設計に不可欠な光閉じ込めについて検討を行った。〜10μmの波長域では何もしないと光が金属電極まで広がって吸収が大きくなる。そのために電極とクラッド層の間に高濃度の緩衝層を挿入する必要があるが、この緩衝層の厚さと光閉じ込め率、金属電極での吸収の依存性を調べ、2重緩衝層構造が有効であることが分かった。また中空ファイバを使った光伝送の実験を行い、その課題等を抽出した。 2 InN/InGaNヘテロ接合形成:InGaN/InN系でc面上の構造では遷移波長はピエゾ分極と自発分極の影響を受け、それによる内部電界の値を把握しておくことが必要である。そこでc面上MQWにおけるPL波長のInN量子井戸幅依存性を測定し、残留電子の影響も考慮に入れて内部電界の大きさを求めた。現在、窒化物半導体を用いた光デバイスの高効率化へ向けて、内部電界の影響を受けず、高い発光効率が期待される無極性面での結晶成長が注目されている。既に我々はR面サファイア基板上への無極性A面InN成長を実現しているが、今年度は、A面InN/InGaN量子井戸構造を作製する上での基盤検討として、A面InNテンプレート上への高In組成A面InGaN成長に関する検討を行った。RF-MBE法を用いて、R面サファイア基板上に、300℃、120分間窒化処理を行った後、InNを400℃で60分間成長させ、その後InGaN成長を400℃で30分間行った。成長後のRHEED観察およびXRD測定から、InNテンプレート及びInGaNは六方晶A面結晶が成長していることを確認した。A面InGaNのXRD回折ピーク角度から、A面InGaNのIn組成は約0.71であると考えられる。またPL測定により、約1.1eV(約1130nm)においてInGaNからの明瞭な発光ピークを観測した。PL発光ピーク位置より求めたInGaNのIn組成は約0.71であり、XRD回折ピークからの計算結果とよく一致する。またInGaN表面平坦性のさらなる向上に対して、InN層とInGaN層との問に低温InGaN中間層を導入することの効果を検証できた。
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