研究概要 |
本研究は、複数の電子を含む系に対するシュレディンガー方程式を、完全系の関数列で与え、これを積分方程式として解こうとするものであり、積分方程式を満足する関数系の係数を遺伝的アルゴリズムで決定することが、最終目標である。 昨年度まで、1電子のみの水素原子モデルについては完成しており、本年度の課題としては以下の項目を目標に挙げていた。 1.水素分子イオンモデル、ヘリウム原子モデルへの拡張のために計算速度の向上 2.展開関数系による有限領域での打ち切りの影響の評価 3.外部電界がある場合のシュタルク効果の計算方法の検討 検討の結果、これらは独立しておらず、展開関数系の改良なしでは、いずれの項目についても実現が難しいことが明白となった。そこで、本年度は展開関数系の改良を行った。 今まで用いていた水素原子モデルのための関数系は、半径方向の展開に球ベッセル関数の-1次,0次,1次,2次のモーメントの球ベッセル展開を利用していた。これを用いた場合、有限領域の打ち切りの影響を低減するために十分広い領域を評価するためには、展開項数が多くなるため、計算速度が低下し、最も簡単な水素原子モデルの計算すら容易ではなかった。さらに、シュタルク効果の計算において上記以外のより多くの次数の球ベッセル関数のモーメントの球ベッセル展開が必要となることも分った。 今までは、モーメントの次数ごとにその展開法を検討していたが、本年度、新たに任意の次数のモーメントの球ベッセル関数の球ベッセル展開の方法を導いた。 この結果、昨年までと比べ、少ない項数の球ベッセル展開で、解が表現でき、高速な演算となり、また打ち切り領域を今までより広げることが可能となった。
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