研究概要 |
我々は脳内の興奮部位を頭部表面上における磁場の観測値から推定する問題の数学モデルとして,球対称領域に対するPoisson方程式の双極子ソース逆問題を取り扱ってきた.しかしながら,このモデルでは磁場の観測値のみから双極子モーメントの動径方向成分を推定することはできない.そこで電場と磁場の双方の観測値を用いることにより,双極子モーメントの全方向成分を推定する方法の構築を行い,観測誤差を考慮した場合も含めて良好な結果を得た.現時点ではその成果の論文はJ.Comput.Appl.Math.において印刷中である. 非定常問題を取り扱うために,時間的に調和なマックスウエル方程式で支配される場合の双極子ソース逆問題の検討を行った.この場合には支配方程式はヘルムホルツ方程式に帰着される.重み付き積分を用いて電場と磁場の双方の観測値から複数個の双極子ソースを誤差評価付きで推定する解法の構築を行い,その成果を研究発表欄に示すようにScientiae Mathematicae Japonicae (Vol.62,2005)に発表した.現時点では,電場のデータを用いずに磁場データのみから推定する方法を構築中である. 我々の解法の中で重要な役割を果たしている代用電荷法に対しても検討を行っているが,安定性などに関するある程度の結果が得られているものの,今後のさらなる検討を必要としている.また観測点の配置に関しては,数値的には非常に興味深い結果を得ているが,その解明には至っていない.これらの項目については来年度も引き続き検討を行う予定である.
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