研究概要 |
我々は脳内の興奮部位を推定する問題の数学モデルとして,球対称領域に対するPoisson方程式の双極子ソース逆問題を取り扱ってきた.しかしながら,このモデルでは頭部表面上の磁場の観測値のみから双極子モーメントの動径方向成分を推定できない.そこで電場と磁場の双方の観測値を用いることにより,双極子の位置のみならず,モーメントの全方向成分も誤差評価付きで推定できる方法の構築を行った.その成果の論文はJournal of Computational and Applied Mathematicsの201卷1号(2007年4月発行予定)に掲載される. 非定常問題を取り扱うために,時間的に調和なマックスウエル方程式で支配される場合の双極子ソース逆問題の検討を行った.我々の提案している方法は重み付き積分に基づいている.昨年度は電場と磁場の双方の観測値から推定する場合について検討したが,本年度は磁場の観測値のみから複数個の双極子ソースを誤差評価付きで推定する数値解法の構築を行った.その成果はすでに国際会議(The Sixth East Asia PDE Conference, Wuhan, China)において発表している. 我々の解法の中で用いている代用電荷法に対しても数値的・解析的な検討を行っているが,いまだ検討の途上にあり,成果を発表するには至っていない. さらに生体における双極子ソース逆問題のみならず応用面・理論面の様々な観点から検討を行い,「研究発表」の雑誌論文欄に示す論文に加えて,本年度は国際会議においても5件(前述の中国におけるものを含む)の発表を行った.
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