研究概要 |
高エネルギー,高平行の白色X線は,特性X線では困難な数mmレベルの深さまで侵入でき,中性子では時間的制約の大きいμmオーダー領域の応力測定が可能となる.このように,高エネルギー白色X線による測定には,特性X線測定と中性子測定に対する相補的な役割が期待される.そこで、SPring-8のBL14B1とBL28B2において得られる高エネルギー白色X線を用いて,材料内部の応力測定に関する基礎的な実験を行った.結晶粒の細かい溶接構造用高張力鋼板WEL-TEN780E(JIS G3128 SHY685)を試験片として用いて曲げ応力を負荷し,厚さ5,10,15mmを透過した回折X線から負荷方向のひずみを求めた.結晶粒径と照射ビーム径の関係による回折プロファイルへの影響,照射時間と回折プロファイル形状、ピーク強度、ピーク位置の関係,ピーク強度と測定ひずみの精度の関係,試料の厚さに応じたBragg角などの測定条件と測定精度に関する検討を行い,以下の結果が得られた. (1)60〜150keV程度の高エネルギー白色X線を用いれば,厚さ5〜15mmのSHY685に対し,透過した回折X線を内部ひずみ測定に利用できる.これにより,材料内部の残留応力のスキャニングが可能となる. (2)内部ひずみの測定精度を高めるためには,スリットサイズをゲージ体積内に5000個以上の結晶粒が含まれるように設定し,回折角は10deg付近にすることが望ましい.さらに,高エネルギー側の回折を利用すると精度向上につながる.ただし,測定時間については今後の検討が必要である. (3)SHY685材の高エネルギー白色X線を用いた内部ひずみ測定では,100keV付近のα-Fe 321回折線を利用することでもっとも精度の良い測定が可能である.
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