研究概要 |
現在,生体軟組織の工学的力学特性同定技術の診療・治療分野への導入が望まれるが,この特性は細胞レベルの特性に由来するものであることから,金属系を中心にこれまで発達してきた工学的な理論や技術を直接応用できない場合もある.とくに上述の軟組織の変形特性に関しては,それが細胞の構造と構成材である細胞膜/壁と細胞液/質の性質に大きく依存すると考えられていることから,この細胞スケールの変形メカニズムの明確化と巨視的な変形との相関性の明確化が望まれている. そこで本研究課題では,固液連成問題の解析手法を基礎として,とくに細胞膜と細胞液で構成したメゾスケールの細胞解析モデルを作成した上で,さらにこれを大規模化して冒頭に述べた症状による軟組織における力学的特性の症状による差異発現メカニズムを明らかにすることを目的とする. 特にこれまでは,顕微鏡下で利用可能な1軸および2軸の引張試験機の開発を行ってきたが,これらの駆動は手動であったため,顕微鏡観察には作業者に熟練を要する上に実験者誤差が生じやすい状況にあった.そこで本計画研究の平成17年度においては,まず顕微鏡下用の十字型2軸引張試験機に関して駆動部にステップモータによる位置制御を可能とするシステムを付加した.特に,顕微鏡の水平ステージに乗せることを可能とするように,2基の小型駆動装置を予定通り設置した.これらの制御に関しては,PCおよびマイコンによる制御システムとなった. さらに本研究代表者らが併せて開発してきた分散処理システムに関して,8台のPCを増設してシステムを発展させた.今後は,特に階層的な固液連成解析に用いる有限要素法に関して,マルチスケール的な大規模解析環境を構築してシミュレーションを本格化させる計画である.
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