研究概要 |
現在,生体軟組織の工学的力学特性同定技術の診療・治療分野への導入が望まれるが,この特性は細胞レベルの特性に由来するものであることから,工学的な理論や技術を直接応用できない場合もある. そこで本研究課題では,固液連成問題の解析手法を基礎として,とくに細胞膜と細胞液で構成したメゾスケールの細胞解析モデルを作成した上で,さらにこれを大規模化して冒頭に述べた症状による軟組織における力学的特性の症状による差異発現メカニズムを明らかにすることを目的とする.特にこれまでは,顕微鏡下で利用可能な引張試験機に関して,PCおよびマイコンによる制御システムとなった. 平成18年度においては,このシステムを用いることで,研究対象となる細胞集合組織の挙動観察を行った.この結果,当初の予想に反して,細胞液のみと思われていた領域に繊維質等の構造体の存在が予測される結果となった.これに関しては,今後も継続して実験・観察を積み重ね,シミュレーションの検証に利用可能な良い実験結果を得られる対策をとる.また,引き続き開発中の分散処理システムに関して,細胞を模した固液連成の有限要素モデルに適用可能な分散処理手法に関して,その信頼性確認を目的とした様々な問題の解析を実施する.まず,平成19年度まで実験観察を続けてきた細胞の集合組織の観察結果について,ここで観られた多様な負荷形態への変形挙動のメカニクスを解明すべく,幾つか構造を仮定しながら数値シミュレーションを実施する.特に,逆解析的な手法を採用する訳ではないが,結果から構造を推定する手法への応用可能性についても考察を加える.また細胞ばかりでなく,広く生体運動が関連する課題の解析を実施する.具体的には,固液連成問題に生体が関連する課題として,水中動物の運動などを検討する,比較検証には,このロボットを作成して,シミュレーション結果と照らし合わせる予定である.
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