研究課題
1.金属クラスターの表面は化学的に活性であり、これを基板に担持させたナノアイランドは触媒として有効である。気相で合成されたクラスターを基板上に堆積させてその機能を最大限に発現するナノ構造を作製するためには、クラスターをサイズ・組成などにより選別し所定の位置に固定することが必要である。クラスターの合体はクラスターの成長過程の一つであり、合体によって実現する形態はその触媒作用に影響を与える。本年度は、まず、2個の金クラスターの合体過程を分子動力学法によって調べた。EAM(embedded-atom method)ポテンシャルを用いて、融点付近の2個のクラスターの合体シミュレーションを行い、クラスターの合体過程ではクラスター表面積の減少により温度上昇が起こること、また、合体後のクラスターの形状と状態によって合体過程を4種類に分類できることが分かった。次に、TB-SMA(tight-binding in the second moment approximation)ポテンシャルを用いて、CoクラスターをCu基板上へ堆積させた後に焼きなましを施すシミュレーションを行い、堆積後のCoクラスターはエピタキシャル構造となるが、Cu{100}面に堆積させた場合には、上部に{100}面、側部4面に{111}面を持つ4角錐台になり、Cu{111}面に堆積させた場合には、上部に{111}面、側部に{100}面と{111}面を持つ6角錐台となり、これらはウルフ多面体を基板表面と平行な平面で切り出した形状であることを明らかにした。2.MBE法によるヘテロ薄膜成長のシミュレーションを行った。まず、Si(001)基板上へのGe原子の堆積ならびたGe原子とSi原子の堆積過程をTersoffポテンシャルを用いた分子動力学法によって調べ、ヘテロ薄膜成長においても初期の数原子層はエピタキシャル成長するがその後は非エピタキシャル成長に移行する有限膜厚エピタキシー(limited-thickness epitaxy)の現象がシミュレーションにおいて再現されることが分かった。一方、磁性層と非磁性層を交互に積層させた金属多層膜では巨大磁気抵抗効果が現れ、ハードディスクの読み取り用磁気センサーなどに応用される。巨大磁気抵抗効果発現のためには高品質な多層膜の形成が必要である。そこで、分子動力学法によりNi/Cu/Ni多層膜のMBE成長シミュレーションを行い、原子の堆積速度が界面粗さに及ぼす影響を調べた。Ni-Cu原子間相互作用の計算には一般化されたEAMポテンシャルを用いた。シミュレーションの結果、Ni基板上に堆積させるCu原子とその後に堆積させるNi原子の両方の堆積速度が大きいほど、Cu原子層とNi原子層の界面ならびにNi原子層表面の粗さは小さくなることが分かった。
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