研究概要 |
強い衝撃波透過による部材の力学特性変化を把握しその結果を円筒の爆発分裂モデル構築への適用するための実験と数値解析を行い、本年度の成果として下記の結論を得た。 (1)モーメンタムトラップ法と平面爆轟波生成手法を組合わせて、A2017と304SS材に種々の圧縮衝撃荷重を加えた素材の回収に成功した。A2017はPETN厚15mmで供試素材TP厚t1とモーメンタムトラップMT厚t2を5,10,15mm変化させた9種類の供試セット(実験I)を準備し、304SSはPETN厚20mm同じく9セット(実験II)を実験に供した。また、A2017については、圧縮カを低下させるためにPETNとTP間に10mm空気層を設け、t1,t12を10,15mm変化させた4セット(実験III)についても実験した。これらの実験条件はAutodyn2Dを用いた数値解析によって十分に吟味して決定している。例えば空気層の減圧効果は53.8%と予測された。 回収供試体の切断面のビッカース硬度試験結果、実験I, II, IIIともHv値は上昇しており、各実験の硬度の上昇率は各々10.0-23.9%、28.4-37.1%、6.8-12.3%であった。後で実施した引張強度σBとは比例関係にあり、係数は2.75-3.16であった。 (2)回収供試体からミニチュア引張試験片と圧縮試験片を採取し試験に供した。前者からは引張強度σB、伸びλ、絞りφ、破断延性εfが得られた。σBはほぼ硬度に比例し上昇していたが、延性関係のパラメータはいずれも著しく低下していた。また後者の実験からは両材料とも応力・ひずみ曲線の上昇が見られたがその挙動には明らかな差異があり、304SSの方がひずみにたいして応力が大きく一様に上昇していた。データとしては0.2%耐力値σ0.2で評価した。 (3)別途実施している304SS、A5052円筒の爆発・破片回収実験の結果に本実験結果を適用して考察を行った。円筒の膨張分裂モデルによれば、円筒の膨張速度計測と破片回収計測結果から材料の分裂エネルギーΓ値が算出される。本研究室のこれまでの結果から、304SSでは爆発力が上昇するとΓ値は上昇した。また、A5052では爆発力上昇でΓは低下していた。Γは耐力と破断延性の積に比例すると考えられるが、そうすると(2)で得られた実験結果は円筒の分裂エネルギーの変化とほぼ合致ているといえる。以上の興味ある考察は来年度の追加実験でさらに信頼性が増すものと期待している。
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