研究概要 |
本年度当初の研究実施計画に基づき,周期的熱負荷による不均質柔軟構造物の熱誘起振動および熱負荷による不均質柔軟構造物の熱座屈,熱弾性安定性という二つの問題に取り組んだ. 1.材料物性が板厚方向の座標変数のべき乗形の不均質性を持つ薄肉長方形板の熱誘起振動問題を理論解析した.全周単純支持された長方形板が上面で正弦的に時間変化する加熱を受け,下面で断熱され,さらに正弦的に時間変化する横荷重を受ける場合を想定した.不均質長方形板の熱弾性応答に及ぼす加熱と横荷重の振動数と材料物性の不均質性の効果や,加熱と横荷重による各熱弾性応答の干渉や増幅効果を数値計算によって検討した.荷重の振動数が板の固有振動数に近いとき,加熱と横荷重による各々の振動応答は互いに打ち消し合う.また,縦弾性係数や密度の不均質性の変化に伴う板の固有振動数の変化は,線膨張係数の不均質性の変化に伴う熱曲げ負荷の変化よりも,板の熱弾性動的応答に及ぼす影響がより顕著であることが明らかになった. 2.材料物性が板厚方向の座標変数のべき乗形の不均質性を持つ薄肉長方形板の線形熱座屈解析および熱弾性安定問題を理論解析した.面内に非一様な非定常温度場を受ける長方形板が,端末で面内変形が自由であり,かつ面外方向に単純支持される場合を想定した.この不均質長方形板に対するvon Karmanモデルの基礎方程式系を定式化し,ガラーキン法を用いて,単一モード近似に対する三次非線形常微分方程式を得た.この非線形方程式の分岐点として臨界座屈温度を解析的に得た.材料不均質性,板のアスペクト比および加熱条件の臨界座屈温度に及ぼす効果を検討した.線膨張係数,ヤング率,熱伝導率の不均質パラメータおよび板のアスペクト比を増加させると,臨界座屈荷重は減少した.また,線膨張係数の不均質性は,平板の中央面に関する非対称性による初期不整の役目を果たすことが明らかになった.
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