二枚の薄板の間にリブを設けた、段ボールのような構造がアルミニウム材の押し出し加工により製造可能になり、軽量・高剛性に加え、加工性がよいことから、鉄道車両本体のみならず、鉄道車両のような大型の構造の衝突時のエネルギー吸収材としてこのダブルスキン構造を利用することが考えられている。本研究ではこの二枚の板と中間のリブの配置、その板厚の比およびこれらの分布、配線に必要な有孔部の適正化、また実際に生じる斜め衝突の効果などについて有限要素法の陽解法ソフトLS-DYNAを用いて、多くのパラメータについて数値計算を行なった。これらの解析により、それらのパラメータについてその適正化を図るデータを求めた。 エネルギー吸収材としての効率を評価するためには荷重-変位曲線における最大荷重、圧壊ストローク、平均荷重、エネルギー吸収量、圧潰モードなどについて検討する必要がある。二枚の薄板の間のリブの配置と板厚またトラス型にした配置とフレーム型配置を考えながら、その性能を検討した。フレーム型の構造では、ダブルスキン構造全体の面外剛性が低下し、構造全体の変形により、好ましくない変形により、荷重・変位関係が不安定になるが、ダブルスキン構造の板厚を薄くすることにより変形モードの波長を小さくし、座屈変形を制御することにより、エネルギーの安定吸収が可能であることがわかった。押し出し成形加工では二枚の板やリブの板厚の任意の分布も製造可能であることにより、板厚の任意の分布についても検討し、座屈波長を制御することにより、圧潰モード、平均荷重、エネルギー吸収量が制御できることを明らかにした。このような座屈モードや座屈波長を複雑に変化させ、各種のパラメータについて最適化を行ってゆく見通しが得られた。 さらに、配線などで利用する孔部についてもその位置や数などを変更し、最大荷重、平均荷重、エネルギー吸収量について検討し、むしろこの孔を利用して、座屈モードの発生に対するトリガーの役目をするだけでなく、座屈変形の発生順序を変更することにより、エネルギー吸収特性も改善できることなどが明らかになった。また、斜め衝突に対しては変形モードが不規則になり、斜め衝突では耐荷能力がかなり減少することがわかった。またあまり大きく斜め衝突ではエネルギー吸収材の転倒モーメントが大きくなり、エネルギー吸収機構としての役目をしなくなることなどもわかり、取り付け部の工夫が必要である。 以上の解析結果と簡易化したモデル実験による変形の比較により、実際に使用できるエネルギー吸収機構の開発のめどが得られた。
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