研究概要 |
繊維強化複合材料は,層間剥離やマトリックスクラックなどの二次的な損傷が連成して最終破壊を引き起こすので,初期損傷を設計でどのように取り扱うかは複合材料構造設計での最重要課題となっている。本研究課題では,実験により複合材料内の損傷発生、進展と最終強度の関係を明らかにし,破壊シミュレーション手法を駆使することにより破壊原因を特定することを目指して研究を実施した。数値解析では結合力モデルと圧縮破壊モデルを用いた損傷解析における問題点と可能性の検討と拡張有限要素法による剥離モデル化の検討を行った。この中で 圧力容器の損傷からの破壊メカニズムの研究と圧力容器設計に関する設計指針 衝撃損傷と損傷板の圧縮強度劣化に関する研究 積層板の円孔周り応力集中部での圧縮破壊現象の研究 接着界面の振動応力特異性と破壊メカニズム の四つのテーマを中心に研究を進め,得られた知見を7編の雑誌論文に発表した。破壊メカニズムと強度の推定のためには,損傷解析ツールが重要であるが,そのためには,安定に解析結果が得られる定式化が不可欠であり,その方針での研究を進めた。ただし拡張有限要素法を駆使することを初期に考えたが,応力解析結果から損傷領域と非損傷領域の境界を陽に導くことの困難さを実感させられ,拡張有限要素法による解析ツールの開発に関しては成果は不十分となったが,ガウス点ごとに損傷を表す手法を発展させ,応用した。拡張有限要素法と同様,この方法でも要素境界と関係なく損傷域を表すことができることを示し,この手法を応用することで複合材料損傷問題のシミュレーションを実施した。損傷解析の一つの方向性を示すことができたと考える。この手法は動解析にも応用でき,損傷の不安定な進展が伴う場合にも有効であることを示した。
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