研究概要 |
2つの円筒形の母材(SUS304あるいはNi基超合金)を突き合わせ、その中央部外周に遮熱被膜を被覆した試験片を作製し、室温から高温(900℃)で引張りとねじりの複合応力を負荷して被膜の破壊強度と剥離強度を調べた。また、1,100℃で酸化層を形成させた場合については室温下で強度試験を行った。(1)剥離長さは繰返しの開始初期に進展が始まるがその後徐々に減速する。それからほぼ傾き一定の定常な成長をおこなった後、被膜が破断する直前には大きく剥離が進展すること、(2)実験温度によって剥離強度は大きく低下する。すなわち、N=10^4での剥離破断応力を疲労限度とすると、剥離疲労限度は20℃のときσw=353.4[MPa]、600℃のとき168.8[MPa]、900℃のとき21.6[MPa】となること、(3)高温酸化処理後では剥離強度の低下が生じると共に被膜自体の強度がさらに大きく低下すること、などが実験的に明らかとなった。 また、ねじりの繰返し負荷による剥離疲労試験とFEM解析との併用により、各実験温度における熱(残留)応力を考慮して求めた界面剥離先端部に働くせん断応力分布から得られた応力拡大係数Kと特異性指数λの関係(剥離進展中の変化)を求めた結果、剥離の進展に伴い応力特異性は次第に鈍化する(K値が低下する)こと、などがわかった。これらの結果から遮熱コーティングの剥離進展を支配する条件について考察し、界面のせん断応力から求めたKおよびλから剥離基準が定まり、応力拡大係数Kから剥離進展速度を予測することが可能なことを示した。
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