プレス加工のうちで最も基本的な加工法である深絞りを例に、加工時の金型に発生する動的なひずみ波形に注目した。自作の球頭深絞り金型を万能試験機に取り付け、しわ抑え力が大きくブランクが破壊する場合、加工途中でしわが発生する場合、絞り比を小さくし破壊せずに絞りきれる場合を比較し、荷重に対する絞り深さ及びしわ抑え板の変位を記録した。また、パンチの根元に取り付けたゲージによりそのひずみ挙動に不連続な急な変動が起こった場合、後続の150msec分の波形データを10KHzで同時に取得した。それらの結果、荷重の上昇と絞り深さの関係は滑らかな変化を示しているのに対し、ばね固定されたしわ抑え板は荷重とともに段階を踏んで上昇する。その際、ひずみの変動はほぼ等間隔で発生している。一方、しごきが起こっている過程ではひずみの変動が頻発している。これらのことから、ひずみの変動の主要因はブランクとダイ肩部とのスリップスティック現象であることが予想できる。ブランクとダイの潤滑状態を変化させた試験、並びに球頭深絞り以外の加工法についても今後検討を行う予定でいるが、ここまでの成果として、プレス加工の際に金型に発生する動的なひずみ挙動はすべてダイとブランクの何らかの作用、反作用の結果現れたものであることが確認できた。それらを測定することにより、ブランクの変形モードの変化や、ダイとの接触状態の変化をモニターすることができ、加工の良否判定を行うことができる可能性がある。
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