プレス加工のうちで最も基本的な加工法である深絞りを例に、加工時の金型(パンチ)に発生する静的・動的なひずみ波形に注目し、それを測定した。自作の球頭深絞り金型を万能試験機に取り付け、しわ抑え力が大きくブランクが破壊する場合、加工途中でしわが発生する場合、絞り比を小さくし破壊せずに絞りきれる場合を比較し、荷重に対する絞り深さ及びしわ抑え板の変位を記録した。また同時に加工中には同じひずみを1kHzの高速サンプリングで測定し、動的な変動も記録した。 パンチの静的ひずみ挙動について、パンチ荷重と絞り深さの実測した曲線の形状(傾きの変化や直線性)を区分的に詳細に観察することで、それらがブランクの様々な変形状態と対応することがわかった。本研究ではそれらを異なる6種類の変形モードに対応付けて整理した。 一方、パンチの動的ひずみ挙動について、これはプレス中のブランクのスティックスリップ現象やき裂発生などに対応していることを確認した。そしてブランクの材質、またはブランクとダイの間の潤滑状態によって、このような動的ひずみ挙動の頻度が変化することを実測した。なお今回用いたブランク材の場合、最終的なパンチに作用させた破断荷重を100%とすると、スティックスリップに関わるパンチ荷重の急激な降下ならびに直後の復帰は、大きさ的にその2〜4%程度に相当するものであった。 このように、パンチに生じる静的・動的なパンチ荷重を測定することにより、ブランク材の加工状態のモニタリングが可能であることをこの研究を通して示した。
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