研究概要 |
切削速度が被削材の塑性波伝播速度を越えると,塑性波は衝撃波として伝播し,せん断域の塑性変形域には非常に高い静水圧が発生する.本研究では,切削速度が被削材の塑性波伝播速度を越え,塑性衝撃波が発生する切削過程を,超高速切削過程と呼ぶ.塑性衝撃波が伝播することにより生じる高静水圧環境は,材料の動的再結晶,相変態,結晶粒の微細化など組織構造の改質を誘発する可能性があるので,機械的強度特性や界面特性の優れた構造を創成することができると考えられる.これより,超高速切削過程の塑性衝撃波の伝播と干渉を積極的に利用することにより通常の切削過程では得られないような高機能性を有する加工面を創成できる可能性があると考えられる. そこで,本研究では,塑性衝撃波を伴う超高速切削過程の切削特性を明らかにして,超高速切削による高機能性加工面の創成の可能性を吟味することを目的とする. 本年度は,超高速切削試験機の設計開発を行った.超高速切削試験機は,切削雰囲気を真空中,活性ガス中,不活性ガスなどに制御できるようにするため,大気と完全に隔離するようにした.切削は,圧縮ガスにより工具あるいは被削材を入れたサボを一気に加速させ,静止している被削材あるいは工具に衝撃的に衝突させて切削する,空気銃タイプとした.サボの加速系(銃筒)と切削を実現する空間,サボの減速系パイプは、大気と完全に隔離できるようにした.サボの加速距離を3m,加工チャンバーの直径を0.4m,サボの減速距離を3mとし,装置全体では長さ9mとした.サボを加速させる圧縮ガスを最大1.0MPaとして,最大切削速度を100m/sとした.今度は、被削材は塑性波伝播速度が低速な低融点材料にし,切削実験を行う予定である.
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