研究概要 |
粗さをもつ実際の表面間の接触において,マクロスケールからメゾスケールまでの真実接触部をスパッタ薄膜の移着を利用して,数nmの精度で検出することが本研究の一つめの目的である.二つめの目的としては,MD法(分子動力学法)を用いた接触シミュレーションとSPMを用いた接触実験を行ない,原子・分子間の相互作用の及ぶミクロスケールの接触を見極めることである.本年度は以下の2点について検討を行った. (1)接触実験I(マクロスケールからメゾスケール):試料表面の吸着分子の影響を考察するために,中真空中(約101Pa)での接触の検討を行うために,真空中に押し付け実験装置を入れ,滑らかな鋼球を滑らかなガラス平面にヘルツ接触させる実験を行なった.この結果,現時点では真空中の接触になると薄膜の移着がし難くなる傾向が見られた.この原因としては,接触界面の水分子によるメニスカス力の影響などが考えられる.しかしながら,真空中で水分子の影響がなくなることによって,大気中では現出し難かった高さ数nm以下の微細な突起の接触がより詳細に現出されるようになったことも考えられるため,今後もさらにデータを積み重ねるとともに,試料表面のエネルギーを考慮した解析とも併せて検討を行っていく予定である. (2)接触実験II(ミクロスケール):ミクロスケールの接触を検討する上でも表面の水分子の影響を取り除いて実験を行なうために,固体表面の吸蔵水の離脱するピーク温度150℃から水素結合して吸着している水分子が離脱するピーク温度340℃に加熱し,固体表面の水吸着分子を除去するために,SPM用の温度制御ユニットを導入し,装置の性能の試験を行ない,温度制御が可能であることを確認した.今後は,SPMを用いてカンチレバーと試料間の凝着力をフォースカーブによって測定し,MD法で計算した結果と比較検討する予定である.
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