研究概要 |
本研究に必要な実験装置を設計・試作すると同時に,理論解析等も行った.その結果,次のことが明らかになった. (1)ハードディスクシステムにあるような超高せん断流の下では,吸着膜が空気せん断流に流され,従来の静的飽和状態に到達できず,常に吸着し続ける.超高せん断流下のこの現象をポンピング効果と名付けた.ハードディスクのスライダ空気軸受表面のポンピング効果をモデル化し,理論的に予想できるようになった. (2)ハードディスクのスライダ空気軸受においては,その間隙が10nm前後しかないため,空気の希薄効果が吸着膜の流れに極めて大きな影響を及ぼす.その結果,空気圧の低いところでは,空気の希薄効果が顕著に現れ,せん断力が著しく低下するため,吸着膜が溜まりやすくなり,厚くなる傾向がある.空気軸受表面にこのような低圧区域があれば,そこの吸着膜が厚くなり,軸受とディスクとの間に架橋し,ハードディスクの故障に直接繋がりかねない.この発見はハードディスクの空気軸受表面の設計指針に根本的な変革が必要になることを示唆する.
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