研究概要 |
平成18年度の計画にしたがって研究を進め,以下の成果が得られた. 1.イオンスパッタリング金属膜によるき裂長さ測定法を金属試験片に適用するための絶縁膜の作成については,シリコンとフライアッシュガラスの蒸着による方法と絶縁剤の塗布方法について検討した.蒸着法では絶縁膜の厚さが数百nmから数μmであり,極めて薄いものの,絶縁抵抗は低い.一方,瞬間接着剤やマスキング剤による塗布法では,絶縁膜の厚さが数μmとなり,比較的に厚いものの,作成方法が簡単で絶縁抵抗もほぼ無限大であり,実際の機械要素のき裂長さの測定には有効と思われる. 2.炭素鋼製三点曲げ試験片表面に一枚型イオンスパッタ金属膜を作成し,き裂長さを測定した.得られたき裂長さの測定精度は同原理を利用した市販のクラックゲージより遙かに高く,高精度且つ簡便性の優れたき裂長さの測定方法が得られた.その研究成果を機械学会論文集にて公表した.また,平成18年7月にギリシャで開かれる破壊力学・実験力学分野の国際会議で発表した. 3.イオンスパッタ金属膜による疲労き裂の検出については,疲労き裂発生検出用三点曲げ疲労試験片を設計製作し,アクリル製及び金属製試験片に疲労き裂発生の検出を行った.イオンスパッタ金属膜の電気抵抗の変化が明確に確認された後,繰返し負荷を中止し,試験片の切欠き部において長さ0.5mm前後の疲労き裂が観測された.イオンスパッタ金属膜の電気抵抗の変化の記録からより早い段階で電気抵抗の上昇が確認でき,その時点での疲労き裂長さは極めて短く,疲労き裂の発生の瞬間と見ることができると考えられる.この疲労き裂発生の検出方法を用いてアクリル製及び金属製試験片の疲労き裂発生寿命を調べた結果,き裂発生寿命は全疲労寿命の8割以上を占めていることを明らかにした.今後,この技術を用いてき裂発生に及ぼす部材の表面状態の影響を調べ,疲労強度向上技術の開発に期待できると思われる.
|