研究者は、これまでに玉軸受単体の回転非同期振れ(Non Repetitive Run-Out、以降NRRO)について理論的・実験的に研究を行ってきた。これまでの経験において、NRROにおける最も大きな成分は、保持器公転周期振れ(通称fc成分)であり、1個の軸受内に組み込まれた玉の寸法相互差(最大玉の直径-最小玉の直径)が原因とされてきた。しかし、最近の研究では、玉の不等配置(正規等配位置からの角度誤差)も影響することが理論的に計算されている。また実験的にも、ポケットすきまの異なる保持器を用いてfc成分を測定し、ポケットすきまの大きな保持器の方がfc成分は大きくなるという結果が得られている。 玉はポケットすきま内で任意に位置することが可能であり、ポケットすきまが大きくなれば玉の不等配も大きくなる可能性は高い。この報告では初期不等配置の状態が回転中も持続されることを前提としている。しかし、実際の軸受においては、玉が保持器ポケット内で固定された状態で回転しているとは考えにくい。 そこで本年度は、玉軸受6200を用いて、ラジアル荷重とアキシアル荷重が同時に作用する合成荷重条件下で転動体の挙動を観察した結果、以下のことが明らかとなった。 (1)保持器回転が止まった状態で保持器を引き抜いた場合には、転動体はアキシアル荷重のみが作用している場合と比較して非常に短時間(1秒未満)で1ヵ所に集中するような挙動をした。 (2)転動体が1ケ所に集まった先頭の転動体の位置は、常にラジアル負荷圏の中央であり、内輪と外輪の間隔が最も狭い場所であった。
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