研究概要 |
デザイナの意図が強く反映している意匠製品の形状設計の一手法であるリバースエンジニアリングでは,形状設計の規範なる実体モデルの形状計測技術および獲得した離散的な3次元点群データに基づいたあてはめ処理技術が重要である. そこで本研究では,離散的な点群データに基づき曲面あてはめ処理によって生成されたNURBS(Non Uniform Rational B-Spline)曲面を評価する方法として,形状を区分できる指標の一つであるガウス曲率に着目し,その分布図を描画することで生成した曲面の評価を行った. 計算機シミュレーションでは,NURBS曲面上の点を仮想点群データとして,差分法によりガウス曲率の算出に必要な値を求めた.その結果,理論曲面式および仮想点群データから求めたそれぞれのガウス曲率の値はよく一致した. 実体モデルを利用した検証実験では,形状の計測は,高速計測が可能なレーザスキャナを使用した非接触式および測定精度の高い接触式の形状計測装置により高密度(点群データピッチ間隔0.3mm以下)な計測によって点群データを獲得した. 生成したNURBS曲面の評価は,曲面のシェーディング描画,あてはめ誤差分布の描画,等高線の描画に加え,ガウス曲率分布の描画を行なったことで,曲面の変化具合箇所の特定および曲面の分類(楕円体曲面,双曲面,平面)ができ,高品位な曲面あてはめ処理が可能となった.また,生成したNURBS曲面に基づいて,切削加工実験を行なった.その結果,あてはめ処理で生成した曲面のガウス曲率の変化が,切削加工曲面にも表現されていたことから,ガウス曲率による曲面評価法は,計算機シミュレーションの段階で活用できることが確認できた. 以上の結果より,実体モデルをベースとする意匠形状設計支援システムにおける点群データに基づく曲面生成とその評価法および差分法によるガウス曲率の算出法の有効性が示された.
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