衛星滴を伴う直径5mm以上の水滴あるいは水塊の水面衝突による気液界面のダイナミックスと気泡音の発生機構に関する実験研究を行った。フルード数<300のイレギュラー気泡取り込み領域では、1度の水滴の水面衝突によって発生する水中音響信号は、衝突に起因する水撃圧を除くと、3回記録される。最初の二つの水中音は人間の耳に聞こえるが、三番目の水中音は非常に弱い。最初の水中音は収縮中のキャビティ底部に後続の衛星滴が衝突して分離・形成される単一空気泡の過渡振動によるものであり、第二の水中音は水面の回復に伴って形成されるスプラッシュジェットが十分に発達して水柱となり、これが落下過程で変形水面と接触して大小さまざまなサイズの空気泡を生成するが、これらの空気泡群の振動による合成音である。第三の水中音は水柱の先端が完全に水中に沈降する際に取り込まれる空気泡の振動によるが、この場合には変動圧があまり大きくないため空気泡は微弱な振動をするのみである。つまり、第一、第二の水中音は基本的に気液界面の分離に基づいて形成される空気泡(あるいは空気泡群)の振動であり確率的な様相を呈しているが、フルード数、ウェーバー数(あるいはボンド数)および衝突時の水滴のアスペクト比に依存している。水柱に取り込まれる小気泡の存在は水柱の崩壊に伴う気液界面の接触や分裂を促進し、第二気泡音の生成確率を高める一つの要因と考えられる。水琴窟への応用を意図して、最大直径7.8mまでの水滴を利用して水瓶(オープン型水琴窟)内部で水滴の水面衝突現象を発生させ、水中音および気中音を観測した。なお、このサイズの水滴の場合、第一気泡音のみが発生した。水琴窟の音(気中音)は水滴の水面衝突で生じる水中音を基本としながら、水瓶内部の反響に起因する倍音を含む広帯域のパワースペクトルをもっていること、また、水温が低いほど大きなパワーの水中音が発生できることが明らかとなった。
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