研究概要 |
流体中に置かれた物体表面圧力分布測定技術の確立を目指して,感圧塗料(PSP)に関する多角的な研究を進めた.具体的には,(a)高速応答型PSPの高精度化を目指した陽極酸化アルミニウム皮膜PSP(AA-PSP)の改良,また,(b)AA-PSPに代わる新たなPSPの開発を行った. (a)AA-PSPの改良 AA-PSPは,多孔質酸化アルミニウム(アルマイト)が有する10ナノメートルオーダーのメゾポーラス構造により,高いガス透過性を有している.しかし,親水性を有するため,発光特性に対する湿度依存性が大きいという問題があった.本研究では,AA-PSP表面に疎水化処理を施すことで,AA-PSPの温度依存性を約1/4に低減することに成功した.実証試験として,遷音速風洞を用いたデルタ翼面上の衝撃波振動現象を捉え,1kHzの変動を1kPaの精度でとらえることに成功した. (b)新しいPSPの開発 陽極酸化アルミニウムに代わるPSP用多孔質材料の開発を進めた. まず,液体にも利用可能な感圧フィルムセンサの開発を進めた.具体的には,フィルムの弾性変形と圧力・せん断力との関連付け,適切なポリマ合成法,光学的計測法の検討を行った.有限要素法解析により,厚みの変化,表面の変位を計測することで,圧力,せん断力が算出可能であることを示した.計測システムを構築し,衝突噴流による応力分布の計測を行った結果,厚み変化を計測するために用いる蛍光パウダーの不均一分布が計測誤差を増すことが分かった. つぎに,任意物体表面への塗布を可能とする酸化アルミニウム皮膜作成法を検討した.ゾルゲル法の一種であるYoldas法をベースにした方法により,圧力感度を有するゾルゲル皮膜の形成に成功した.さらに,適切なテンプレート材料(ポリエチレングリコール)を添加することにより,AA-PSPに匹敵する多孔質構造が作れることを示した.
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