研究概要 |
本研究では,分子の配向現象で生じる液晶のER効果と温度変化による液晶の相変化を利用して,新たな液冷システムの構築を目指した.具体的には液晶のER効果と相変化により流れを制御し,発熱部を局所的に冷却する手法の開発を目指した.昨年度から本年度初めの実験において,液晶で流れの制御は可能であることは分かったが,液晶の粘度の高さとその熱伝達特性を考慮すると,現時点で得られる液晶では水などより高い冷却性を得難いことが明らかになった.この点は,将来の材料開発に委ねる事とし,本年度は現時点で可能な温度変化+電場印加による相変化を用いた流動停止を含む流れ場の制御の実験的検討を行った. まず,新たにスメクティック液晶を用いて温度制御と電場印加により,ネマティック液晶では生じない流動停止(降伏特性)効果について実験を行った.その結果,直流電場下でスメクティック相を発現させた場合には,無電場で相変化させた場合より高い降伏応力を発生し,流動停止効果が高くなることが分かった.一方,交流電場を印加した場合は,ほとんど降伏特性を示さず,流動性が高いことも明らかになった.また,電極面粗さの降伏特性への影響を調べ,面粗さが大きいほど高い降伏応力が得られることが明らかになった.さらに,この現象を把握するために流動停止から構造が崩壊する過程を可視化により観察した.そして,降伏による構造変化に違いから,直電場下では不連続もしくはゆがみを有する層構造が形成されていることが予測された. これらの点から,液晶を用いれば温度電場制御により,冷却システムにも利用できる流動停止から流動に至るまで広範囲な流動制御が可能であることが明らかになった.
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