研究概要 |
本研究は三次元壁乱流の最も基本的なモデルであり,体積力や付加歪み速度を伴う複雑乱流の一つとして,軸流中の回転円筒上のねじれた速度分布の乱流境界層の動的組織構造を実験的・数値的に調べ,特にその中のらせん渦構造を同定・解明しようとするものである. 実験は,まず円筒が静止している場合の乱流境界層について,I,X形の熱線プローブにより瞬時時系列データを取り込み,この瞬時データからVITA法および四象限分割法を用いて,バースト現象,乱流組織構造を解析した.その結果からは,平板乱流境界層との決定的相違は見出されなかった. らせん渦構造を調べるため,熱線レイクシステムを構築した.三次元乱流境界層の動的構造については,平板乱流境界層に比べて従来の知見が乏しいため,まず,この熱線レイクシステムによる動的構造の抽出を平板境界層に対して行った.熱線レイクはI形プローブをスパン方向に3.5mm間隔で16本ならべたもので,自作の16ch熱線流速計を用いて境界層の主として外層域における多点同時計測を行った. この瞬時多点同時計測データに対して固有直交分解による解析を行った.その結果,組織構造を示すとされる第1モードの固有関数は,y/δ=0.2では境界層厚さ程度の波長を持つ変動波形を示し,層外に向かってその波長が境界層厚さの1.5倍程度まで増加することが明らかとなった.第2モードのエネルギ寄与率は第1モードと同程度であり,したがって組織構造としてはこの第2モードの寄与も考慮せねばならないと考えられる. この第1,第2モードのみを用いて速度場を再構成し,乱流・非乱流を示す間欠関数のスパン方向時系列分布を明らかにした.そして,これらのモードが境界層外層における乱流・非乱流という一つの組織構造を同定しうるパラメータであることを示した.
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