研究概要 |
本研究は三次元壁乱流の最も基本的なモデルであり,体積力や付加歪み速度を伴う複雑乱流の一つとして,軸流中の回転円筒上のねじれた速度分布の乱流境界層の組織構造を実験的に調べ,特にその中のらせん渦構造を同定・解明しようとするものである. 実験は,まず円筒が静止している場合の乱流境界層の瞬時時系列データからVITA法および四象限分割法を用いて,バースト現象,乱流組織構造を解析した.その結果からは,平板乱流現界層との決定的相違は見出されなかった. らせん渦構造を調べるため,熱線レイクシステムを新規に構築し,動的構造の抽出を平板境界層に対して試み,瞬時多点同時計測データに対して固有直交分解による解析を行った.その結果,組織構造の同定には第1モードの固有関数のみならず,第2モードの寄与も考慮せねばならないことが明らかとなった.そして,これらの第1,第2モードによって境界層外層における乱流・非乱流という構造の一つを同定しうることを示した. 次に,円筒回転時におけるねじれた平均速度分布と変動速度分布を熱線流速計により測定し,平均速度分布に対してこれまでに提案された各種の法則の妥当性を検討した。 外層の乱流組織構造を調べるための第一段階として,扁平度と間欠係数を調べたが,これらのパラメータによっては回転円筒特有の組織構造を捕らえることは困難であった。そこで変動速度のパワースペクトルを調べた。平板と静止円筒の場合,周波数の増加とともに単調に減少するスペクトルを示すのに対し,円筒回転時にはスペクトルにバンプが発生し,回転速度が大きいほどバンプが生じる周波数が高いことが示された。これは回転円筒乱流境界層の組織構造が,スペクトルにその特徴が現れるほど規則的なものであることを示すものであり,円筒に巻きつく形態のらせん渦構造の存在が裏付けられた。
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