腎臓結石の治療には、衝撃波による破砕治療が用いられている。この治療法は、結石に向かって集束する衝撃波を体外から入射し、結石を細かく破砕して尿と一緒に体外に排出するものである。手術を用いない治療法であることから、患者への負担が少ないと言われている。しかし実際には、人体内の音速の非一様性から、衝撃波が結石に同時には集束せず、効果的な破砕に繋がっていないことが指摘されている。 上記のことを踏まえ、本研究は、パルスレーザー誘起水中集束衝撃波の手法を用いて擬似位相共役衝撃波を発生させ、以下の研究を実施した。 (1)パルスレーザー誘起衝撃波の手法を用いることにより、水とPMMAから構成される非一様音速場に、擬似位相共役衝撃波を発生させることが出来ることを実験的に立証した。 (2)パルスレーザーで誘起された擬似位相共役衝撃波が、非一様音速場においても、一点に集束することを実証した。 (3)擬似位相衝撃波の波面形状を変化させることにより、非一様音速場通過後の衝撃波集束点において、衝撃波の圧力波形を、ある程度制御できることを示した。この方法により、臓器に損傷を与える可能性が指摘されている衝撃波背後の負の圧力を、ある程度抑制することが出来る。 (4)解析的な手法を用いて円筒形集束衝撃波の圧力波形を求めた。その結果、解析結果と測定結果は、定性的に一致することが示された。 上記の課題に付随して、以下に示す結石破砕に関連した研究成果を発表した。 (5)固体材料が衝撃的に破壊する際には、秒速400m以上の高速で進展するき裂が発生する。この高速進展き裂は、き裂速度が速いときには、き裂が二つに分岐する。本研究では、き裂の分岐過程においてエネルギー解放率が連続であることが示された。この分岐現象を結石破砕に応用できれば、より効果的な破砕治療に繋がる。
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