研究概要 |
本年度は,磁性流体の超音波伝播特性(静止場)と超音波(UVP)を用いた磁性流体管内振動流の速度分布特性(流動場)を実験,測定し,これらの特性と磁性流体中に形成される鎖状クラスターとの相関を検討した。静止場における磁性流体中の超音波伝播では,超音波の音速は磁性流体の温度や磁場印加によって変化し,異方性,ヒステリシスなどの特性が得られた。これは内部に形成される鎖状クラスターや磁性流体内部の強磁性体微粒子の構造が大きく関係していると考えられる。また,強磁性体微粒子の濃度分布変化で超音波伝播特性も劇的に変化することから,この時の流体の状態をより詳細に検討していく必要がある。これらの特性を詳細に計測,検討することで,今後,超音波を用いて磁性流体の内部構造を解析することが期待できる。 また,流動場における計測と位置づけた,長時間の磁場印加によって鎖状クラスターを形成させた状態の管内振動流において,興味深い実験結果を得た。ピストン始動直後に鎖状クラスターが原因と考えられる特異な速度分布が見られ,時間経過と共に安定な速度分布へ推移していく過程が明らかとなった。ここで,鎖状クラスター成長の目安として擬似流量による評価方法を新たに提案した。疑似流量の変化率を調べることにより,印加磁場による鎖状クラスターが流れにおよぼす影響を評価でき得ることが分かった。また,疑似流量の変化率の挙動から,管内での鎖状クラスターの成長には限界があることが判明した。これは,静止場における超音波による検討と合致している。 以上を総括して,磁性流体は不透明流体で,磁性流体内部に形成される鎖状クラスターは非常に崩れやすいため,超音波を用いた計測は非常に有効である。今後,超音波を用いた流体内部構造解析や流動計測の研究は非常に意義深いと考えている。
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