研究概要 |
軸流圧縮機に発生する旋回失速を事前に予知し,適切な失速回避システムを構築することを最終的な目的として衝撃波管を用いた非定常実験研究を行っている.本研究の最大の特徴は,三段軸流圧縮機に対して直列に貯気槽を接続し,後方から圧縮波を印加する過渡試験であり,従来の旋回失速研究では得られていない多くの新しい成果が期待されている.昨年度までは,圧縮機ハブ側に設置したフラップを流量の低下と共に開くことで,動翼チップ側の軸流速を確保して失速を遅延させるハブフラップシステムの検証実験を,三段機を用いて行ってきた.本年度もその継続実験として,スタッガ角を種々に変化させた実験条件下で,高周波不安定擾乱の存在,二重セルの旋回など,多段機特有の失速予兆現象の存在を明らかにすることができた.さらに,三段目から人為的に失速を発生させる実験においても,最終的な全段失速に至る過程を詳細に把握すると共に,初段動翼前方に設置した圧力計により失速突入の数百回転前に予兆を捉えることが可能であり,ハブフラップシステムの有効性も合わせて確認することができた.本年度はこれらの結果を踏まえ,圧縮機後方からまず微弱な圧縮波を印加する実験を行った.圧縮波の通過直後に圧縮機は深い失速状態と正常な運転状態とを非定常的に繰り返す現象が確認された.背圧の急激な上昇によって発生する旋回失速に,提示したハブフラップシステムが有効に機能するかを今後調査していきたい.また,実験条件によっては圧縮波によって発生した失速と,貯気槽を接続したことで発生したサージ現象が交互に繰り返す特異な状態が観察された.この同時発生現象は,局所的な非定常現象である旋回失速と大局的な現象であるサージとを関連付けるものであり,流体機械分野における今後の重要な研究課題になると考えている.
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