本研究は、高発熱の電子デバイスの熱制御法の高度化を目指して、熱伝達率が大きい沸騰熱伝達を熱制御に利用するための基礎的知見を得ることを目的としている。特に、実機の熱制御条件を考慮し、狭隘流路および低流量という条件で、今後予想される高熱負荷と環境問題を考慮し、作動流体として水を利用した熱制御法を対象とし、熱設計で重要となる、圧力損失、熱伝達率、限界熱流束速特性を調べた。 実施した研究は大別して2つに分けられる。第一は、研究代表者の研究室で蓄積された細い円管による実験データを整理し、圧力損失および熱伝達率の予測相関式を導出した。第二は、電子素子の除熱形態として円管流路より実用的な扁平矩形流路を持つテストセクション(流路幅20mm、長さ80mm[加熱長さは40mm]、高さは1.0mmと1.5mmの2種類)を用いた研究である。 第一の円管のデータ整理に関しては、従来の太い管(直径4mm以上)に対する相関式に、細い管で顕著となる蒸気流の効果を考慮することで整理できることを明らかにした。第二の矩形流路に関しては、流路の長さが短いことを考慮して質量流束が16〜76kg/m^sの範囲で、圧力損失、沸騰熱伝達率および限界熱流速を調べ、以下の結果を得た。圧力損失に関してはかなり小さくなるため、実用的にはさらに流路高さを小さくできること、円管で導出された相関式を用いると損失をかなり低めに予測することが示された。ただし、円管に比べ変動が大きいことが示された。熱伝達率は熱流束との関係で見ると円管とほぼ同じ特性を持つが、かわき度との関係で見ると矩形断面内での液相の分布が不均一であることが影響し円管とは少し異なった。限界熱流束と質量流束の関係を調べた結果、円管の相関式は限界値をかなり高めに予想し、矩形管のデータを考慮して導出された相関式のほうが適切であり、流路断面での液相分布の影響が大きいことが明らかとなった。
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