研究概要 |
本研究では,まずエタノールを直接用いる固体高分子型燃料電池(DEFC)を対象とした.エタノールは無害で,取り扱い易い上に,酵母とグルコース溶液からアルコール発酵して得ることができる.得られたバイオエタノール溶液を,自作のDEFC(独自のCast法で作製した膜電極接合体を使用)の燃料として用いたところ,純エタノール水溶液に近い発電性能を有することが確かめられた. エタノールを燃料とすると,その副生成物が流路内に滞留して触媒反応を阻害し,また燃料成分の拡散を低下させる.その対策として,アノード側の屈曲流路における液体燃料の流動状態を調べ,流路形状を改善した.本研究者らが開発した熱流動解析コード(GTTコード)により,屈曲流路における水の流動解析を行い,流路の屈曲部について,流れの淀みを少なくしつつ圧力損失を極力低減できるように,遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて流路形状の最適化を試みた.その結果,直角に屈曲した流路に比べ,圧力損失が約33%低い流路形状を見出せた.また,エタノールをDEFCに供給するためにポンプを用いると,余計にエネルギーを消費することになる.そこで,補助動力を一切必要としない完全自立型の燃料供給装置として,酵母によるアルコール発酵の際に生じる炭酸ガスの圧力を利用してバイオエタノールを循環させる独自の自立型バイオリアクターを開発した. 次に,貴金属触媒を用いずに,酵母の持つ酵素を生体触媒として利用するバイオ燃料電池を対象とし,その各構成要素が発電出力に及ぼす影響を調べるため,様々な条件の下で実験を行った.バイオ燃料電池では,酸化剤の濃度が高くなるに従って出力が向上し,またメディエータの濃度および外部負荷抵抗は最高出力を発揮させる最適値を持つことが判った.結局,面積20cm^2の集電体を持つ単セルを用いた場合に,最大で2mW程度の出力を得ることができ,実用化の可能性のあることが示された.
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